2012年 03月 17日
おろし金を打つ! |
宮崎陶房にて開かれた、鍛金家・仲村渉さん の展示会「金槌のしごと展」。
ワークショップで、おろし金を作らせてもらいました。
銅のおろし金は、以前友人が京都に旅した時にお土産にくれた有次の薬味おろしを持っていた。薬味おろしだから小さいのだが、これでおろすと断然大根がうまいので、大根を細く切ってこれで無理矢理おろしていた。
今回、陶芸作家の宮崎せんせいのところでご縁のある仲村さんがおろし金を教えてくれるというので、「大根を無理なくおろせるおろし金をぜひ」と挑んだのだ。
まずは銅板から形を切り出す。おろし金なので繊細な形ではなく、台形チックなシンプルなやつで。銅板にマジックで形を描き、剪定ばさみの親玉みたいなやつでむりむりと切っていく。
私は角を落とすぐらいはぎゅぎゅっと出来たが、曲線を女子が切るのは至難の技だったらしく、大概の人は切ってもらっていた。
一緒におろし金を作ったCANVAS & CLOTHの木下さんは、しずく形の愛らしい薬味おろし。普段布を扱っている人なので、板からいかにロスなく切り出すか悩んでいた。偉し。
切り出した板は端が粗くて危ないので、やすりでせっせと削って丸くする。このヤスリは爪やすりの本気のやつ、といった感じで、ちょうど昨日爪を切ったばかりなのでついでに削っておいた。
ゆがんだ板を金槌で平らになおしてもらい、穴を穿つ。おろし金にはひっかけ穴がいるでしょう。作業中にも台に固定するのに穴は必要なのだ。これはとんとんと千枚通しみたいなやつで引っかかりをつけたあと、ドリルでどるーんと空けてもらったので楽である。
銅のおろし金の表面て、銀色をしているでしょう。私はあれは磨いて出てくるもんだと思っていたら、腐食防止のために錫(スズ)をコーティングしているんだそうで。確かに銅は中まで銅色だ。
この作業がなかなか面白かったのである。全部やってもらったけど。
銅板をカセットコンロに火にかけてあっためる。ここに、棒状の錫をくるくるとクレヨンのように塗り延ばす。錫は低温で溶けるのだ。ハンダだね。溶けた錫を小布(酸化防止剤が染ませてある)でくるくるのばしてできあがり。ぴかっと光る。これで錫コーティングのできあがり。
コーティングの終わった銅板を、仲村先生特製の台にのっける。上の方に棒が生えているので、さっき空けた穴を挿して固定できる。よくできているなあ。この台の面積分は、作業できるのだ。私のはぎりぎり限界サイズ。
マジックで、目を打つガイドラインを引く。この線に向かって上下からどんどん打っていくのだ。
線が引けたらあとは淡々とくさびで目を立てていく。45度の角度で、かんかんかん、と。というと簡単そうだけど、結構コツがいるのだ。しかも、口で教わってもぴんと来ない。どんどんやるしかない。
しかも、今更なんだけど、私のおろし金はでかくて目を打つ面積が途方もなく広い。どんどんやらねば終わらない。やっていると、なんとなくツがわかってくる。私のこつは「浅めに入れて、だんだん深くして起こす」だ。
うっかり気を抜くと細く浅くなっちゃうので、気合いを入れてとんかん打つのだ。
作業が進んでいくと、左手の側面が立てた目に刺さって痛い…何事も修行、がまんして打っていたら「忘れてた、これを敷いてください!」と革をもらったので敷いて打ったら楽だった。何事も道具だな。
薬味おろしの人やアクセサリーの人はもう終わって楽しそうなのである。私はひたすら製造作業を続ける。うむ、やはりでかかったか…でも小さいのはもう持っているんだもの。大根を清々とおろせるのがほしいのだもの。
がんばる。
板が広いので、打った圧力でだんだん反ってくるのをちょいちょい先生に直してもらう。お世話をかけます。
でけたー。
不揃いで目が細いのやら太いのやら、浅いのやら深いのやらあるが、まあいい。(これは後で思わぬ効果を生む)
両端をとんとん叩いて折り返して、できあがり。
タイプライターの文字みたいなやつをカーン!と打って文字を入れることもできる。
せっかくだから「NEZUMI」と入れたが、疲れてヘロヘロになっていたせいか、Eが逆さだ。「トイザらス」みたいになった。まあいい、こういうブランドロゴということにしよう。
なんぜねずみか。「ねずみおろし」という小噺参照。
最後はガイドラインを消しゴムで消して完成!のはずだが、何しろ私が作ったのはおろし金という名の刃物だ。消しゴムをかけると、ラインより先に消しゴムが消える。
帰宅してからプラカラー用のうすめ液を染ませたティッシュで消した。こちらも最終的にはティッシュがなくなった。ザ・刃物。
早速大根をおろしてみる。
目が揃っていないので、細かくふわっとした大根おろしとしゃくしゃく粗おろしの部分が混ざって非常においしい。ねらったわけではないが、よいぞ。
私が作ったのはかわいくないおろし金だけれど、他の方々が作ったのは粋な薬味おろしや真鍮製のアクセサリーなど。皆様センスがすばらしい。
そして最終的にみんな「もっと叩きたい。鍋とか作りたい」という気持ちになっているのが鍛金の魔術。これって錬金術の一種なのでは。
ちなみに宮崎先生はフライパンを作り、今は雪平鍋を製作中。いいなあー!私は銅ボウルをこさえてみたい。
銅のイオンって甘いんだそうで、ホットケーキや塩麹漬けの鶏肉を焼くと甘くかぐわしい香りがすごいのだ。
銅、いいなあ。
実用品を作れるのって、その後も生活が楽しくてすばらしい。
仲村先生はオブジェや風鈴、鍋、ポストなどや、最近私の周囲の呑兵衛に人気のワインホルダーなどを製作されている。(だのに本人はお酒を飲めない…)
また4月に茅ヶ崎で個展があるようだ。たのしみ。
ありがとうございました!
■宮崎陶房のブログ・鍛金ワークショップ・銀のスプーン
・鍛金ワークショップ・銅のおろし金
・鍛金ワークショップ・真鍮のアクセサリー
■おもて珈琲のブログ
・鍛金!ホリディ!!
ワークショップで、おろし金を作らせてもらいました。
銅のおろし金は、以前友人が京都に旅した時にお土産にくれた有次の薬味おろしを持っていた。薬味おろしだから小さいのだが、これでおろすと断然大根がうまいので、大根を細く切ってこれで無理矢理おろしていた。
今回、陶芸作家の宮崎せんせいのところでご縁のある仲村さんがおろし金を教えてくれるというので、「大根を無理なくおろせるおろし金をぜひ」と挑んだのだ。
まずは銅板から形を切り出す。おろし金なので繊細な形ではなく、台形チックなシンプルなやつで。銅板にマジックで形を描き、剪定ばさみの親玉みたいなやつでむりむりと切っていく。
私は角を落とすぐらいはぎゅぎゅっと出来たが、曲線を女子が切るのは至難の技だったらしく、大概の人は切ってもらっていた。
一緒におろし金を作ったCANVAS & CLOTHの木下さんは、しずく形の愛らしい薬味おろし。普段布を扱っている人なので、板からいかにロスなく切り出すか悩んでいた。偉し。
切り出した板は端が粗くて危ないので、やすりでせっせと削って丸くする。このヤスリは爪やすりの本気のやつ、といった感じで、ちょうど昨日爪を切ったばかりなのでついでに削っておいた。
ゆがんだ板を金槌で平らになおしてもらい、穴を穿つ。おろし金にはひっかけ穴がいるでしょう。作業中にも台に固定するのに穴は必要なのだ。これはとんとんと千枚通しみたいなやつで引っかかりをつけたあと、ドリルでどるーんと空けてもらったので楽である。
銅のおろし金の表面て、銀色をしているでしょう。私はあれは磨いて出てくるもんだと思っていたら、腐食防止のために錫(スズ)をコーティングしているんだそうで。確かに銅は中まで銅色だ。
この作業がなかなか面白かったのである。全部やってもらったけど。
銅板をカセットコンロに火にかけてあっためる。ここに、棒状の錫をくるくるとクレヨンのように塗り延ばす。錫は低温で溶けるのだ。ハンダだね。溶けた錫を小布(酸化防止剤が染ませてある)でくるくるのばしてできあがり。ぴかっと光る。これで錫コーティングのできあがり。
コーティングの終わった銅板を、仲村先生特製の台にのっける。上の方に棒が生えているので、さっき空けた穴を挿して固定できる。よくできているなあ。この台の面積分は、作業できるのだ。私のはぎりぎり限界サイズ。
マジックで、目を打つガイドラインを引く。この線に向かって上下からどんどん打っていくのだ。
線が引けたらあとは淡々とくさびで目を立てていく。45度の角度で、かんかんかん、と。というと簡単そうだけど、結構コツがいるのだ。しかも、口で教わってもぴんと来ない。どんどんやるしかない。
しかも、今更なんだけど、私のおろし金はでかくて目を打つ面積が途方もなく広い。どんどんやらねば終わらない。やっていると、なんとなくツがわかってくる。私のこつは「浅めに入れて、だんだん深くして起こす」だ。
うっかり気を抜くと細く浅くなっちゃうので、気合いを入れてとんかん打つのだ。
作業が進んでいくと、左手の側面が立てた目に刺さって痛い…何事も修行、がまんして打っていたら「忘れてた、これを敷いてください!」と革をもらったので敷いて打ったら楽だった。何事も道具だな。
薬味おろしの人やアクセサリーの人はもう終わって楽しそうなのである。私はひたすら製造作業を続ける。うむ、やはりでかかったか…でも小さいのはもう持っているんだもの。大根を清々とおろせるのがほしいのだもの。
がんばる。
板が広いので、打った圧力でだんだん反ってくるのをちょいちょい先生に直してもらう。お世話をかけます。
でけたー。
不揃いで目が細いのやら太いのやら、浅いのやら深いのやらあるが、まあいい。(これは後で思わぬ効果を生む)
両端をとんとん叩いて折り返して、できあがり。
タイプライターの文字みたいなやつをカーン!と打って文字を入れることもできる。
せっかくだから「NEZUMI」と入れたが、疲れてヘロヘロになっていたせいか、Eが逆さだ。「トイザらス」みたいになった。まあいい、こういうブランドロゴということにしよう。
なんぜねずみか。「ねずみおろし」という小噺参照。
最後はガイドラインを消しゴムで消して完成!のはずだが、何しろ私が作ったのはおろし金という名の刃物だ。消しゴムをかけると、ラインより先に消しゴムが消える。
帰宅してからプラカラー用のうすめ液を染ませたティッシュで消した。こちらも最終的にはティッシュがなくなった。ザ・刃物。
早速大根をおろしてみる。
目が揃っていないので、細かくふわっとした大根おろしとしゃくしゃく粗おろしの部分が混ざって非常においしい。ねらったわけではないが、よいぞ。
私が作ったのはかわいくないおろし金だけれど、他の方々が作ったのは粋な薬味おろしや真鍮製のアクセサリーなど。皆様センスがすばらしい。
そして最終的にみんな「もっと叩きたい。鍋とか作りたい」という気持ちになっているのが鍛金の魔術。これって錬金術の一種なのでは。
ちなみに宮崎先生はフライパンを作り、今は雪平鍋を製作中。いいなあー!私は銅ボウルをこさえてみたい。
銅のイオンって甘いんだそうで、ホットケーキや塩麹漬けの鶏肉を焼くと甘くかぐわしい香りがすごいのだ。
銅、いいなあ。
実用品を作れるのって、その後も生活が楽しくてすばらしい。
仲村先生はオブジェや風鈴、鍋、ポストなどや、最近私の周囲の呑兵衛に人気のワインホルダーなどを製作されている。(だのに本人はお酒を飲めない…)
また4月に茅ヶ崎で個展があるようだ。たのしみ。
ありがとうございました!
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by shizumin_exite
| 2012-03-17 17:29
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