2007年 08月 15日
信頼は、目に見える。 |
そんなことを思った日。
犬の爪切りやブラッシングを見せてくれる、というので友人宅にお邪魔してきた。
彼女は、自宅でごく限られた知り合いの犬のケアをしている。彼女のケアには定評があり、「帰ってからしばらくは毛が抜けないし、ふわふわ・つやつやしているの」と飼い主さんが喜ぶのだそうだ。彼女が仕事を休んでいる間も、「彼女でないと犬が嫌がるから」とみんな待っているのだ。
この日は、そんな犬のうちのひとりのケアの様子を、ゆっくり、「なぜこうするのか」を教えてもらいながら見せてもらった。
そして感じたのは、これは単純に「ブラッシング」「爪切り」だけではなく、エステでもあり、健康診断でもあり、大事な対話でもあるということ。
犬のトリミングやブラッシング、歯石取り用品や歯みがき用品などはペットショップでたくさん売られているけれど、実際にここまでていねいにするところをきちんと教わったり、見たりする機会をどれだけの飼い主が見つけていることだろう。
友人が使っている道具は、そんなに特殊なものではない。特殊な薬品やケア用品を使っているわけでもない。
特にこの日は、飼い主さんにいつもやっているケアを見てもらって、自分でも家でできるように…との見学の意味もあるのでフルコースではないのだけど、それでも、素人の私が見ても「ていねいに、とはこういうことなのか」と感心するケアだった。
飼い主さんが「昨日スリッカー・ブラシをかけたばかり」だそうなのに、コームでていねいに毛の根本からほぐしてブラッシングすると、こんなにむだ毛が抜けた。飼い主さんも驚いていた。
表面だけとかして、浮いた毛がからんでくっついたままになっている子はけっこういるらしい。
「ていねいなブラッシング」って、こういうことを言うんだな、と思った。
コームでとかしただけでも、ふわっふわでつやつやしているもの。
犬もマッサージされているみたいで、気持ちよさそうだ。
余談だが、よい言われる「抜け毛が多い犬」というのは、単純に犬種やブラッシング不足などの問題だけでなく、「落ち着かない環境」や「周囲を威嚇して強がっている」子も多いのだとか。よそに預けた時によく毛が抜ける、外出時に抜け毛が多い、というのはそういうことなんだな。
確かに、皮膚が緊張して毛穴が開けば毛も抜けようというものだ。人間だってストレスが多いと抜け毛が増える。私もリフォーム屋とのトラブルで精神的に疲れた日には、シャンプー時にぞろりと毛が抜けた。
「うちの子、毛が抜けやすいのよね~、そういう犬種だから仕方ないの」とあきらめる前に、ゆったりくつろげる環境を整えてあげるのも大事なのだと思う。
ねずみだってそうだ。ゆったり安全な環境でくつろいでいる子は、表情もほよんとしているし、毛並みも艶が出てふっくらしている。
落ち着かなくて物音にドキドキしたり、闘病中&授乳中で体力が落ち、ストレスがかかっている子は如実に毛並みに現れる。
人間の皮膚と同じように、動物の毛皮も精神状態や体調を知る重要な手がかりなのだ。つくづく、毛並みは「顔色」なんだなあ、と思う。大事なヒント。見逃しちゃだめだ。
爪切りも鮮やか。犬もいやがらず、ほいほい、とひっくり返されてあっという間に終わる。
切った後はきちんとやすりで先をととのえる。きちんとこういうケアをしてもらっている犬の爪で、みみず腫れを作られることはないだろう。床だって傷みにくくなるはず。
「ペットのいたずらに強い壁紙」「傷の付きにくい床材」なんてものを選ぶのもひとつの手だけれど、ケア次第でかなりトラブルは軽減されるのではないか。
ひっかき傷をつくりやすい子の予防にもなると思う。
さあ、耳そうじですよ
「舌を出したいのよ」
特にはさみなどを使っているタイミングだと、ぺろりはしっかり見ていないといけない。
よくぺろぺろ舌を出す子の場合、餅つきのように「はい、ほいっ、はいっ」と見計らっての作業だそうな。鮮やか。この人は、餅つきも上手だろうなあ(笑)
耳そうじ、歯石取りも順調に。
歯石取りというのは、なかなかできないことだそうな。トリマーさんがやってくれることでもないらしい。
人間なら歯医者に行って自分で口を開けるけれど、犬の場合病院で麻酔をかけてやることも多いのだとか。当然だが、麻酔は動物の体に負担になる。ねずみの場合は、手術時の麻酔で死を覚悟する怖いことだ。犬だってそうだろう。
だから、避妊手術や誤飲などの手術時に「ついでに」歯石取りを頼む人もいると聞く。
犬は3歳ぐらいまでに歯のエナメル質がほぼ完成し、固くするするになった歯の表面には歯石がつきにくくなるので、それまでにこまめなケアをすればあとは長いスパンの歯石取りで大丈夫なのだそうだ。
この日は飼い主さんも、歯石取りのコツ…というか、感覚を勉強。
器具でこすってみて、「ざらっ」という感覚があれば、そこに歯石がついているということ。
とっかかりを見つけてこつんとひっかけてやれば、力を入れてゴリゴリしなくても「カッ」と取れるものなのだ。思っていたより痛いもんでもないらしい。
こういう「感覚」って、本で読んだりネットで調べてもなかなかつかみにくいものだから、貴重な経験だ。
口元のおひげもていねいに整えて、美人さんに。
最後は歯みがきして、おしまい。
彼女は確かに歯石取りや爪切りなどのテクニックがとても上手だ。
でも、この日に一番感じさせられたのは、「大事なのは犬との信頼関係だ」ということ。
わんこが相手を信じて身をゆだね、こちらもしっかり犬の動き…体だけでなく、心の動きも…を見ていて、次を予想することで、刃物や先のとがった器具を使っても危なくなくケアできる。
「爪切りだって歯石とりだって、なんでもないことなのよ。
ほいほいほい、ほら終わった。痛くなかったでしょ?」
「…あ、ほんとだ。」
なんて会話が見えるようだ。
この子は小さい頃から、ひっくり返されたり口を見せたり足を触られたりすることに慣れていて、暴れない。暴れても仕方ない。おりこうに静かにしていれば、とっとと終わる。
そして、気持ちがいいことだ。それを知っているのだ。
私という慣れない見学者がいることで少し緊張したみたいだけれど、彼女が「はい、いつもはこうでしょ。大丈夫」と導くことですぐにニュートラルな状態に戻れる。
わんこは彼女を信頼しているし、彼女もしっかりわんこを見ている。
自分のわんこだったとしても、これだけ心で繋がれている人がどれぐらいいるのだろうか。面倒で犬の言うことを聞いてしまっている人は、一から始めるのに苦労しそうだな。
ちょっと嫌がったら怖がってやめたり、言うことを聞いてしまったり。爪切りなんて、飼い主の方がイヤな場合、怖い場合が多いんだろうな。その雰囲気は、すぐにわんこに察知される。
「なんかやだなー。暴れてみよう。…あ、逃げられる。次からもこうすればいいんだ」と学んだわんこは、すぐに「この人はちょっと暴れれば逃げられる、ちょろい」と覚えるだろう。
飼い主の自信のなさは、犬の不安にもつながるのだ。
私はねずみと暮らしてきて、同じことを感じてきた。飼い主の不安はねずみにすぐバレる。だから、ねずみが病気を抱えて心配でつらい時でも、普段通りに接しないといけない。本人が一番不安な時に、飼い主がぐらぐらしていてはいけないのだ。
しんどくて泣くときは、風呂場やトイレでこっそり泣く。それでも、ねずみたちにはバレちゃってるかもしれないけれどね。
信頼関係は、目に見える。犬を飼っていない私でも、「犬になめられている飼い主」や「信頼し合っているペア」は、見えちゃうのだ。
高価なシャンプー、ナチュラルなハーブ製品、プロもおすすめのトリミング用品…もいいかもしれないが、それらを使っているという満足感だけで本当のケアができていない人は、案外たくさんいるんじゃないかな。
人間もおんなじ。高価な化粧水を後生大事にちびちび使うよりは、安くてもシンプルなものをぱしゃぱしゃ惜しげもなく使い、しっかり手のひらで押さえて浸透させたり、コットンでじっくりパッティングした方が肌は柔らかくなる。
ブランドの洗顔料を適当に塗りたくってさっと流すより、なんでもない固形石鹸をていねいにふわふわに泡立ててしっかり何度も洗い流す方が、汚れ落ちもしっとり感も上質。そういうことだ。
犬の場合は、トリマーさんのテクニックをじっくりなめるように見学して自宅でのケアに取り入れるのも一つの手ではないかな、なんて思った。
私も、自分のシャンプーの前にていねいにブラッシングするようにしたら、からみが少なくなって汚れ落ちがよくなったもの。これは前述の彼女が犬のシャンプーのことを話しているのを聞いてはじめたものだ。
犬のケアからも、人はいろんなことが学べるのだ。
友人と犬から、いろんなことを教えてもらった日だった。
犬の爪切りやブラッシングを見せてくれる、というので友人宅にお邪魔してきた。
彼女は、自宅でごく限られた知り合いの犬のケアをしている。彼女のケアには定評があり、「帰ってからしばらくは毛が抜けないし、ふわふわ・つやつやしているの」と飼い主さんが喜ぶのだそうだ。彼女が仕事を休んでいる間も、「彼女でないと犬が嫌がるから」とみんな待っているのだ。
この日は、そんな犬のうちのひとりのケアの様子を、ゆっくり、「なぜこうするのか」を教えてもらいながら見せてもらった。
そして感じたのは、これは単純に「ブラッシング」「爪切り」だけではなく、エステでもあり、健康診断でもあり、大事な対話でもあるということ。
犬のトリミングやブラッシング、歯石取り用品や歯みがき用品などはペットショップでたくさん売られているけれど、実際にここまでていねいにするところをきちんと教わったり、見たりする機会をどれだけの飼い主が見つけていることだろう。
友人が使っている道具は、そんなに特殊なものではない。特殊な薬品やケア用品を使っているわけでもない。
特にこの日は、飼い主さんにいつもやっているケアを見てもらって、自分でも家でできるように…との見学の意味もあるのでフルコースではないのだけど、それでも、素人の私が見ても「ていねいに、とはこういうことなのか」と感心するケアだった。
飼い主さんが「昨日スリッカー・ブラシをかけたばかり」だそうなのに、コームでていねいに毛の根本からほぐしてブラッシングすると、こんなにむだ毛が抜けた。飼い主さんも驚いていた。
表面だけとかして、浮いた毛がからんでくっついたままになっている子はけっこういるらしい。
「ていねいなブラッシング」って、こういうことを言うんだな、と思った。
コームでとかしただけでも、ふわっふわでつやつやしているもの。
犬もマッサージされているみたいで、気持ちよさそうだ。
余談だが、よい言われる「抜け毛が多い犬」というのは、単純に犬種やブラッシング不足などの問題だけでなく、「落ち着かない環境」や「周囲を威嚇して強がっている」子も多いのだとか。よそに預けた時によく毛が抜ける、外出時に抜け毛が多い、というのはそういうことなんだな。
確かに、皮膚が緊張して毛穴が開けば毛も抜けようというものだ。人間だってストレスが多いと抜け毛が増える。私もリフォーム屋とのトラブルで精神的に疲れた日には、シャンプー時にぞろりと毛が抜けた。
「うちの子、毛が抜けやすいのよね~、そういう犬種だから仕方ないの」とあきらめる前に、ゆったりくつろげる環境を整えてあげるのも大事なのだと思う。
ねずみだってそうだ。ゆったり安全な環境でくつろいでいる子は、表情もほよんとしているし、毛並みも艶が出てふっくらしている。
落ち着かなくて物音にドキドキしたり、闘病中&授乳中で体力が落ち、ストレスがかかっている子は如実に毛並みに現れる。
人間の皮膚と同じように、動物の毛皮も精神状態や体調を知る重要な手がかりなのだ。つくづく、毛並みは「顔色」なんだなあ、と思う。大事なヒント。見逃しちゃだめだ。
爪切りも鮮やか。犬もいやがらず、ほいほい、とひっくり返されてあっという間に終わる。
切った後はきちんとやすりで先をととのえる。きちんとこういうケアをしてもらっている犬の爪で、みみず腫れを作られることはないだろう。床だって傷みにくくなるはず。
「ペットのいたずらに強い壁紙」「傷の付きにくい床材」なんてものを選ぶのもひとつの手だけれど、ケア次第でかなりトラブルは軽減されるのではないか。
ひっかき傷をつくりやすい子の予防にもなると思う。
さあ、耳そうじですよ
「舌を出したいのよ」
特にはさみなどを使っているタイミングだと、ぺろりはしっかり見ていないといけない。
よくぺろぺろ舌を出す子の場合、餅つきのように「はい、ほいっ、はいっ」と見計らっての作業だそうな。鮮やか。この人は、餅つきも上手だろうなあ(笑)
耳そうじ、歯石取りも順調に。
歯石取りというのは、なかなかできないことだそうな。トリマーさんがやってくれることでもないらしい。
人間なら歯医者に行って自分で口を開けるけれど、犬の場合病院で麻酔をかけてやることも多いのだとか。当然だが、麻酔は動物の体に負担になる。ねずみの場合は、手術時の麻酔で死を覚悟する怖いことだ。犬だってそうだろう。
だから、避妊手術や誤飲などの手術時に「ついでに」歯石取りを頼む人もいると聞く。
犬は3歳ぐらいまでに歯のエナメル質がほぼ完成し、固くするするになった歯の表面には歯石がつきにくくなるので、それまでにこまめなケアをすればあとは長いスパンの歯石取りで大丈夫なのだそうだ。
この日は飼い主さんも、歯石取りのコツ…というか、感覚を勉強。
器具でこすってみて、「ざらっ」という感覚があれば、そこに歯石がついているということ。
とっかかりを見つけてこつんとひっかけてやれば、力を入れてゴリゴリしなくても「カッ」と取れるものなのだ。思っていたより痛いもんでもないらしい。
こういう「感覚」って、本で読んだりネットで調べてもなかなかつかみにくいものだから、貴重な経験だ。
口元のおひげもていねいに整えて、美人さんに。
最後は歯みがきして、おしまい。
彼女は確かに歯石取りや爪切りなどのテクニックがとても上手だ。
でも、この日に一番感じさせられたのは、「大事なのは犬との信頼関係だ」ということ。
わんこが相手を信じて身をゆだね、こちらもしっかり犬の動き…体だけでなく、心の動きも…を見ていて、次を予想することで、刃物や先のとがった器具を使っても危なくなくケアできる。
「爪切りだって歯石とりだって、なんでもないことなのよ。
ほいほいほい、ほら終わった。痛くなかったでしょ?」
「…あ、ほんとだ。」
なんて会話が見えるようだ。
この子は小さい頃から、ひっくり返されたり口を見せたり足を触られたりすることに慣れていて、暴れない。暴れても仕方ない。おりこうに静かにしていれば、とっとと終わる。
そして、気持ちがいいことだ。それを知っているのだ。
私という慣れない見学者がいることで少し緊張したみたいだけれど、彼女が「はい、いつもはこうでしょ。大丈夫」と導くことですぐにニュートラルな状態に戻れる。
わんこは彼女を信頼しているし、彼女もしっかりわんこを見ている。
自分のわんこだったとしても、これだけ心で繋がれている人がどれぐらいいるのだろうか。面倒で犬の言うことを聞いてしまっている人は、一から始めるのに苦労しそうだな。
ちょっと嫌がったら怖がってやめたり、言うことを聞いてしまったり。爪切りなんて、飼い主の方がイヤな場合、怖い場合が多いんだろうな。その雰囲気は、すぐにわんこに察知される。
「なんかやだなー。暴れてみよう。…あ、逃げられる。次からもこうすればいいんだ」と学んだわんこは、すぐに「この人はちょっと暴れれば逃げられる、ちょろい」と覚えるだろう。
飼い主の自信のなさは、犬の不安にもつながるのだ。
私はねずみと暮らしてきて、同じことを感じてきた。飼い主の不安はねずみにすぐバレる。だから、ねずみが病気を抱えて心配でつらい時でも、普段通りに接しないといけない。本人が一番不安な時に、飼い主がぐらぐらしていてはいけないのだ。
しんどくて泣くときは、風呂場やトイレでこっそり泣く。それでも、ねずみたちにはバレちゃってるかもしれないけれどね。
信頼関係は、目に見える。犬を飼っていない私でも、「犬になめられている飼い主」や「信頼し合っているペア」は、見えちゃうのだ。
高価なシャンプー、ナチュラルなハーブ製品、プロもおすすめのトリミング用品…もいいかもしれないが、それらを使っているという満足感だけで本当のケアができていない人は、案外たくさんいるんじゃないかな。
人間もおんなじ。高価な化粧水を後生大事にちびちび使うよりは、安くてもシンプルなものをぱしゃぱしゃ惜しげもなく使い、しっかり手のひらで押さえて浸透させたり、コットンでじっくりパッティングした方が肌は柔らかくなる。
ブランドの洗顔料を適当に塗りたくってさっと流すより、なんでもない固形石鹸をていねいにふわふわに泡立ててしっかり何度も洗い流す方が、汚れ落ちもしっとり感も上質。そういうことだ。
犬の場合は、トリマーさんのテクニックをじっくりなめるように見学して自宅でのケアに取り入れるのも一つの手ではないかな、なんて思った。
私も、自分のシャンプーの前にていねいにブラッシングするようにしたら、からみが少なくなって汚れ落ちがよくなったもの。これは前述の彼女が犬のシャンプーのことを話しているのを聞いてはじめたものだ。
犬のケアからも、人はいろんなことが学べるのだ。
友人と犬から、いろんなことを教えてもらった日だった。
by shizumin_exite
| 2007-08-15 22:23
| いぬ