2008年 08月 05日
ぬか床、働いています。 |
7月の終わりに、ちょっと遅ばせながらスタートした今年のぬか床。
猛暑のせいか、いやむしろおかげか、仕込んで3日目にはもうかなり酸っぱい香りがして発酵しはじめた。
捨て漬けのつもりで入れた野菜だけど、普通ならただ塩辛いだけのはずなのに、結構食べられた。そして朝かき混ぜるときにぬか床がほかほかしている日も…
本来は、床は18℃以上あれば発酵をはじめるので、6月中旬ぐらいにスロースターターではじめた方がリスクなく育つのだけれど、夏野菜のハイシーズンに間に合ってよかった。
7/22に仕込んだ床で、7/30には本番の野菜を漬け始める。
参考までに、下記が私の漬け手順。
(1)野菜の準備。
野菜をざっと水洗いし、塩をまぶす。
個人的な感覚だが、うまいからときゅうりやなすばかり漬けているとどうも床の調子がうまくない。
酸味が出すぎたり、うまみが弱ってきたなと感じたら、キャベツを漬ける。すると、なぜかは知らぬが床が調子を取り戻す。
きゅうりはそのまま粗塩をまぶす。みょうがもそのまま。
なすはへたを切り落として、そっと塩をすりこむ。切ると色がよろしくないことが多いので、小振りのもの、細めのものを丸ごと使うのがいい。
キャベツは葉をくるくる丸めて、塩をまぶさずに漬ける。
(2)床を混ぜる。
全体的にこまめに空気を入れてかき回す人が多いかと思うが、私はざっくりしか混ぜていない。
ぬか床の乳酸菌は嫌気性で、酸素をたくさん取り込むと活動が弱くなる。
だから、酸っぱくなりすぎた時にはせっせと混ぜる。すると酸味がおだやかになる。
逆に、乳酸菌を応援したいときにはあまりせっせと混ぜない。ぬかをたくさん足したときには2日ほどほっとくこともある。
毎日の手入れは、底に手を差し込んでざっくり天地返し、上と底のぬかを大きく入れ替えてやるぐらいでよいようだ。日に何回も混ぜられる時には、野菜の入れ替え時以外は表面を軽く耕してやるだけでよい。主に変化があるのは表面だから。
においを嗅いだり床の味をみたりして、必要な手当をしてやる。
これはもう、勘と経験としか言いようがないのだ。
飼っている動物が調子が悪くなったら、それぞれの症状に見合った手当をしてやるのと同様だ。
(3)下ごしらえしておいた野菜を床に入れる。
大きめのものを底から入れていくとよい。
大きな床なら野菜を縦に差し込むことができるので面積を有効に使えるのだが、うちのはぬか1kg程度の床なので深さがない。よって、寝かせて入れる。
野菜を入れ、ぬかをかぶせる…を繰り返す。
なすは色の事情で具合が難しい。が、ていねいに扱えばみょうばんなしにきれいな茄子紺が出る。
なすを漬けるときには、上の方に、最後にそっと入れる。(色が気にならないのなら、どこにでも埋めればいい)みょうばんを使うと色がきれいに出やすいが、私は床にあまりいろんなものを入れたくないので使っていない。
丸ごとだと漬かるのに1日かかるが、色よく仕上がる。漬け上がりには、ヘタの方を下にしてぎゅっと絞ると、均等に味が入る。絞らないと、芯がふかふかして味の染みない部分ができるよ。
(4)最後に床の表面をならして、壁面やふたについたぬかをきれいに拭く。ここでぬれぶきんが活躍する。
私は最近は「クラフレックス」(通称:青サッサ)という不織布を使っている。よくスーパーのサッカー台やパン屋のレジ横に置いてある、しましまのアレだ。業務用だけあって、たくさん入って安い。使い捨てのような風情なのに意外に洗濯に耐える。ぼろぼろになってきたら、ガスレンジ拭きになる。
壁面についたぬかはほっておくとよくないにおいのもとになるので、きれいに拭き取っておく。
(5)余分なぬかをきれいにふきとったら、ふたをしていつもの置き場所に置く。
うちでは台所のすみ、食材庫の前に適当に置いてある。写真をとるために今回はシンクに置いて手入れをしたが、いつもは置き場所でやる。ぬかがこぼれてもいいように布が敷いてある。
漬け上がりは半日~1日。サイズや床の調子、気温などによって違うので塩梅をみつつ漬ける。冷たく冷やすとおいしいので、私は漬かり頃にぬかを少しまぶしたまま取り出し、丸ごと冷蔵庫で冷やしてから切っている。ただし、なすは食べる直前に取り出す。これも色のせいだ。だから、食べる時間から逆算して床に入れる。
冷蔵庫漬けは、あまりおすすめしない。私の経験では、冷蔵庫漬けだと失敗例が多いのだ。ほかほかしていても、菌が元気なら床はおかしなことにはならない。置きっぱなしで触らなければ腐るだろうけれど。留守中に金魚の鉢を冷蔵庫に入れる人はいなかろう。
菌が活動するにはある程度以上の温度が必要なのだ。あったかくても、ちゃんと手を入れていれば大丈夫。ほんとは、信頼できる友人に預けて毎日あやしてもらうのが一番だ。ぬか床友達を作っておくといい。
15年以上前、静岡で仕事をしていた時、あまりにも密閉されて室温が上がるワンルームに済んでいたので、床を会社の机の下に置いて手入れをしていた。最初は仕事仲間に驚かれたが、昼食時にぬか漬けを提供していたので歓迎された。
旅行などで長期間留守にする場合に冷蔵庫に入れることを指示した本もあるが、帰宅後にリカバリーできないことが多いので、1週間以上留守をするならいっそ床を更新してしまった方がいいと思う。
2~3日の留守なら、ビオフェルミン錠剤を粉にしたもので乳酸菌を強化し、表面にキッチンペーパーを敷き、塩をたっぷりまいておく。帰宅したらよく混ぜ、ゆっくりリカバリーしてやれば何事もなかったかのように食べ始められる。
つんとセメダインのような刺激臭がしたら、酸膜酵母が発生しているということ。表面がぬるぬるして白っぽくなる、アレだ。
こうなっても床の死亡ではないので、あきらめないことだ。捨てずに混ぜてしまう。乳酸菌を応援するため、よくよく底から混ぜる。粉末にしたビオフェルミンや、ぬかみそからし
を混ぜるのもいい。
せっせと混ぜれば数日で復活するはず。それでもおかしい様子なら、きっぱり更新すればいい。瀕死の床のマシな部分を少し取り分けておき、混ぜると早い。
ちなみに、「ぬかみそからし」について。
以前は、粉末の「和からし」を使っていたのだが、最近あまりスーパーで扱わなくなってしまった。漬け物をする人が減っているのだろうな。
ミックスものはあまり好きではないのだが、背に腹は代えられぬ。近所のスーパーの漬け物売り場で扱っているぬかみそからしを使っている。
粉末からしに、卵の殻・山椒・陳皮・唐辛子が入っている。袋の表示通りに使うと多すぎるので、たまに床のご機嫌うかがいをする時に大さじ3杯程度入れている。あんまり入れると苦くなるのだ。
よく、「ぬか床は手入れが面倒だ」と言われるが、私は混ぜることよりも「ふきんをぬらしてしぼり、ていねいに壁面のぬかを拭き取る」のが一番面倒だと思っている。混ぜるのはざっくりでよいからだ。だから、床の手入れをしようと思ったらまずふきんをぬらしてしぼる。これがくせになれば、床の手入れなどなにほどのこともない。
あと、毎日漬け物を食べない人には面倒かな。日々野菜を入れ替えていれば、ぬか床の存在を忘れない。何も入っていない床を毎日混ぜるモチベーションを保つのは難しいし(何も生えていない冬の鉢に水をやり続けるが如し)、まあ、そんなに漬け物が好きでないならわざわざ自家製の床をこしらえるまでもなかろうと思う。おいしい市販品をたまに買えばいい。「きれいな花を見たいけど、水や肥料をやったり植え替えたりするのが面倒」だという人は、切り花を買えばいい。「かわいいおりこうな犬をさわりたいけど、しつけやうんちの世話は面倒」なら、たまに犬カフェに行ったり飼っている友人の家に遊びに行けばいい、というのとおなじだ。
長々と書いたが、ぬか漬けは面倒なものではない。菌のごきげんうかがいという点では、自分のおなかの具合と似ている。菌のバランスを崩せば調子が悪くなる。食べ物や温度、水分の調子をととのえてリカバリをはかる。
どうしても力が弱れば、抗生物質で腸内の菌を皆殺しにしてリセット。おんなじだ。
私の床の配合はつまらないほどシンプルだが、干ししいたけやら大豆やらにんにくやらビールやら、いろいろやってみて、最終的にこうなった。原因は少ない方が失敗した時に対処しやすい。
ぬか床に正解はない。おいしければ正解。いろいろやってみてほしい。そして、乳酸菌は元気で丈夫な菌。麹の発酵作業よりずっと簡単なので、どんどんやってみるよろし。
レシピブログに参加しています。
猛暑のせいか、いやむしろおかげか、仕込んで3日目にはもうかなり酸っぱい香りがして発酵しはじめた。
捨て漬けのつもりで入れた野菜だけど、普通ならただ塩辛いだけのはずなのに、結構食べられた。そして朝かき混ぜるときにぬか床がほかほかしている日も…
本来は、床は18℃以上あれば発酵をはじめるので、6月中旬ぐらいにスロースターターではじめた方がリスクなく育つのだけれど、夏野菜のハイシーズンに間に合ってよかった。
7/22に仕込んだ床で、7/30には本番の野菜を漬け始める。
参考までに、下記が私の漬け手順。
(1)野菜の準備。
野菜をざっと水洗いし、塩をまぶす。
個人的な感覚だが、うまいからときゅうりやなすばかり漬けているとどうも床の調子がうまくない。
酸味が出すぎたり、うまみが弱ってきたなと感じたら、キャベツを漬ける。すると、なぜかは知らぬが床が調子を取り戻す。
きゅうりはそのまま粗塩をまぶす。みょうがもそのまま。
なすはへたを切り落として、そっと塩をすりこむ。切ると色がよろしくないことが多いので、小振りのもの、細めのものを丸ごと使うのがいい。
キャベツは葉をくるくる丸めて、塩をまぶさずに漬ける。
(2)床を混ぜる。
全体的にこまめに空気を入れてかき回す人が多いかと思うが、私はざっくりしか混ぜていない。
ぬか床の乳酸菌は嫌気性で、酸素をたくさん取り込むと活動が弱くなる。
だから、酸っぱくなりすぎた時にはせっせと混ぜる。すると酸味がおだやかになる。
逆に、乳酸菌を応援したいときにはあまりせっせと混ぜない。ぬかをたくさん足したときには2日ほどほっとくこともある。
毎日の手入れは、底に手を差し込んでざっくり天地返し、上と底のぬかを大きく入れ替えてやるぐらいでよいようだ。日に何回も混ぜられる時には、野菜の入れ替え時以外は表面を軽く耕してやるだけでよい。主に変化があるのは表面だから。
においを嗅いだり床の味をみたりして、必要な手当をしてやる。
これはもう、勘と経験としか言いようがないのだ。
飼っている動物が調子が悪くなったら、それぞれの症状に見合った手当をしてやるのと同様だ。
(3)下ごしらえしておいた野菜を床に入れる。
大きめのものを底から入れていくとよい。
大きな床なら野菜を縦に差し込むことができるので面積を有効に使えるのだが、うちのはぬか1kg程度の床なので深さがない。よって、寝かせて入れる。
野菜を入れ、ぬかをかぶせる…を繰り返す。
なすは色の事情で具合が難しい。が、ていねいに扱えばみょうばんなしにきれいな茄子紺が出る。
なすを漬けるときには、上の方に、最後にそっと入れる。(色が気にならないのなら、どこにでも埋めればいい)みょうばんを使うと色がきれいに出やすいが、私は床にあまりいろんなものを入れたくないので使っていない。
丸ごとだと漬かるのに1日かかるが、色よく仕上がる。漬け上がりには、ヘタの方を下にしてぎゅっと絞ると、均等に味が入る。絞らないと、芯がふかふかして味の染みない部分ができるよ。
(4)最後に床の表面をならして、壁面やふたについたぬかをきれいに拭く。ここでぬれぶきんが活躍する。
私は最近は「クラフレックス」(通称:青サッサ)という不織布を使っている。よくスーパーのサッカー台やパン屋のレジ横に置いてある、しましまのアレだ。業務用だけあって、たくさん入って安い。使い捨てのような風情なのに意外に洗濯に耐える。ぼろぼろになってきたら、ガスレンジ拭きになる。
壁面についたぬかはほっておくとよくないにおいのもとになるので、きれいに拭き取っておく。
(5)余分なぬかをきれいにふきとったら、ふたをしていつもの置き場所に置く。
うちでは台所のすみ、食材庫の前に適当に置いてある。写真をとるために今回はシンクに置いて手入れをしたが、いつもは置き場所でやる。ぬかがこぼれてもいいように布が敷いてある。
漬け上がりは半日~1日。サイズや床の調子、気温などによって違うので塩梅をみつつ漬ける。冷たく冷やすとおいしいので、私は漬かり頃にぬかを少しまぶしたまま取り出し、丸ごと冷蔵庫で冷やしてから切っている。ただし、なすは食べる直前に取り出す。これも色のせいだ。だから、食べる時間から逆算して床に入れる。
冷蔵庫漬けは、あまりおすすめしない。私の経験では、冷蔵庫漬けだと失敗例が多いのだ。ほかほかしていても、菌が元気なら床はおかしなことにはならない。置きっぱなしで触らなければ腐るだろうけれど。留守中に金魚の鉢を冷蔵庫に入れる人はいなかろう。
菌が活動するにはある程度以上の温度が必要なのだ。あったかくても、ちゃんと手を入れていれば大丈夫。ほんとは、信頼できる友人に預けて毎日あやしてもらうのが一番だ。ぬか床友達を作っておくといい。
15年以上前、静岡で仕事をしていた時、あまりにも密閉されて室温が上がるワンルームに済んでいたので、床を会社の机の下に置いて手入れをしていた。最初は仕事仲間に驚かれたが、昼食時にぬか漬けを提供していたので歓迎された。
旅行などで長期間留守にする場合に冷蔵庫に入れることを指示した本もあるが、帰宅後にリカバリーできないことが多いので、1週間以上留守をするならいっそ床を更新してしまった方がいいと思う。
2~3日の留守なら、ビオフェルミン錠剤を粉にしたもので乳酸菌を強化し、表面にキッチンペーパーを敷き、塩をたっぷりまいておく。帰宅したらよく混ぜ、ゆっくりリカバリーしてやれば何事もなかったかのように食べ始められる。
つんとセメダインのような刺激臭がしたら、酸膜酵母が発生しているということ。表面がぬるぬるして白っぽくなる、アレだ。
こうなっても床の死亡ではないので、あきらめないことだ。捨てずに混ぜてしまう。乳酸菌を応援するため、よくよく底から混ぜる。粉末にしたビオフェルミンや、ぬかみそからし
を混ぜるのもいい。
せっせと混ぜれば数日で復活するはず。それでもおかしい様子なら、きっぱり更新すればいい。瀕死の床のマシな部分を少し取り分けておき、混ぜると早い。
ちなみに、「ぬかみそからし」について。
以前は、粉末の「和からし」を使っていたのだが、最近あまりスーパーで扱わなくなってしまった。漬け物をする人が減っているのだろうな。
ミックスものはあまり好きではないのだが、背に腹は代えられぬ。近所のスーパーの漬け物売り場で扱っているぬかみそからしを使っている。
粉末からしに、卵の殻・山椒・陳皮・唐辛子が入っている。袋の表示通りに使うと多すぎるので、たまに床のご機嫌うかがいをする時に大さじ3杯程度入れている。あんまり入れると苦くなるのだ。
よく、「ぬか床は手入れが面倒だ」と言われるが、私は混ぜることよりも「ふきんをぬらしてしぼり、ていねいに壁面のぬかを拭き取る」のが一番面倒だと思っている。混ぜるのはざっくりでよいからだ。だから、床の手入れをしようと思ったらまずふきんをぬらしてしぼる。これがくせになれば、床の手入れなどなにほどのこともない。
あと、毎日漬け物を食べない人には面倒かな。日々野菜を入れ替えていれば、ぬか床の存在を忘れない。何も入っていない床を毎日混ぜるモチベーションを保つのは難しいし(何も生えていない冬の鉢に水をやり続けるが如し)、まあ、そんなに漬け物が好きでないならわざわざ自家製の床をこしらえるまでもなかろうと思う。おいしい市販品をたまに買えばいい。「きれいな花を見たいけど、水や肥料をやったり植え替えたりするのが面倒」だという人は、切り花を買えばいい。「かわいいおりこうな犬をさわりたいけど、しつけやうんちの世話は面倒」なら、たまに犬カフェに行ったり飼っている友人の家に遊びに行けばいい、というのとおなじだ。
長々と書いたが、ぬか漬けは面倒なものではない。菌のごきげんうかがいという点では、自分のおなかの具合と似ている。菌のバランスを崩せば調子が悪くなる。食べ物や温度、水分の調子をととのえてリカバリをはかる。
どうしても力が弱れば、抗生物質で腸内の菌を皆殺しにしてリセット。おんなじだ。
私の床の配合はつまらないほどシンプルだが、干ししいたけやら大豆やらにんにくやらビールやら、いろいろやってみて、最終的にこうなった。原因は少ない方が失敗した時に対処しやすい。
ぬか床に正解はない。おいしければ正解。いろいろやってみてほしい。そして、乳酸菌は元気で丈夫な菌。麹の発酵作業よりずっと簡単なので、どんどんやってみるよろし。
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by shizumin_exite
| 2008-08-05 11:47
| うちごはん